Colors of Heart ~7色のハート~
なるほどなと虎っぽは頷く。
「最後のシーンは鳥肌たったよ。お前ってやっぱり役者だったんだな。大丈夫だ。お前はいつの日か脚光を浴びる」
ぽんと肩に手を置いて、虎っぽは適当なことを言う。
「ありがとう」と一応お礼を言うと、虎っぽは「ふと思ったんだけど」と続けた。
「どの土浦金次が、本当の土浦金次なの?」
笑っているけど、視線はじっと俺を見ていた。
俺は質問には答えずににっこりと微笑んだ。
「おおい、虎、そろそろ行くぞぉ」
後ろから呼ばれた虎っぽは、「All right」と呟き、腰を上げた。
「じゃ、また家で」と短く答えると、虎っぽは軽く手を挙げた。
足元の落ち葉を掻き分け、小走りで走り去る虎っぽの後ろ姿を見送った。
シェアハウスの中ではみんなのリーダーで、いつも威張っているイメージのある虎っぽが、ここではパーカーにジーンズ姿でウエストバッグを背負って、現場を駆け回っているギャップが可笑しかった。
ひらりと着ていた制服のズボンにイチョウの葉が舞い落ちた。
学ランの裾から覗くYシャツにはべっとりと血のりがついている。
コーヒーを飲み干すと、花束を抱え、立ち上がった。
舞い落ちてきた葉を記念にとポケットに忍ばせる。
どれが本当の自分かって?
そんなの俺にも解らないさ。
見上げると高くて青い秋空が広がっていた。
「yellow heart」 *FIN*