Colors of Heart ~7色のハート~
「ちょっと、虎ちゃん、落ち着いてっ!」
心の中は女だし、穏和な性格だが、身長190cmにガタイのいい体格のサンゴは、この家1番の力持ちだ。
サンゴは簡単に金次から俺の腕を解いた。
ゲホゲホと咳き込みながら、小柄な金次は床に転がった。
「もぅ、虎ちゃんは力加減を知らないんだから、大丈夫、金ちゃん?」
「顔は傷つけないでよー、商売道具なんだからー。虎っぽの乱暴者ー」
膝を付き立ち上がると、自分のスニーカーを持って、そそくさと自室に切り上げて行ってしまった。
べーと子供みたいに舌を出しながら。
「ったく、元はと言えば、あいつが最初にインフルエンザにかかったんじゃないか」
今から1週間前、舞台の最終公演を終えて帰って来た金次が倒れた。
真っ赤な顔をして、フーフーしながら玄関先で力尽きていたのを、サンゴが発見したのだ。
この家の主婦を担うサンゴが、おかゆを作ったり、薬を飲ませたりと看病して、金次は復活したけれど、肝心なウィルスが、今度は同じ家に住む花に伝染してしまったらしい。
「まぁ、私も虎ちゃんも運良く予防接種受けてたから良かったけど、目に見えないんだから、仕方ないじゃない。金ちゃんだって、共演者からうつされたのかな?って言ってたし。草くんは丁度、旅に出てる時だから良かったものの」