Colors of Heart ~7色のハート~


葵の交換留学先である大学近くのバス停で降りた。


しかし、久しぶりにバスに乗った。実家には自分用の車がない。


バスに揺られて通ったハイスクール時代を思い出した。


日本と違って、ぎゅうぎゅうに人を押し込まない所はいい。


バス停のある大きな通りを渡り、路地を入っていくと、英国風の煉瓦作りの商店が並ぶ。


観光誌などでは、「アーティスト街」と記され、画材屋やギャラリーなどが多い通りなのだという。


芸術はよく知らないので、特に興味を示すような店ではないが、シェアメイトである美大生の草(そう)が来たのなら、時間を忘れる位、興味深い通りなのかもしれなかった。


DVDレンタルショップ、コンビニと小さな商店をいくつか通り過ぎると、周りが緑で覆われた白い壁の建物に行きつく。


アイアンの洒落た門扉を開けると、階段が続いている。


階段を上った所、向かって右側はオープンカフェのテラス席になっていた。


パラソルの付いたテーブル席が交互に3つ並び、モーニングを楽しむ人たちでテーブルは埋まっていた。


小さな子供を連れた若い夫婦に、大型犬を傍らに座らせ、コーヒーを飲みながら新聞読むオジさん。


そして俺の母親くらいの女性のグループ。


テラス席を囲むように、花壇が置かれ、そこには燃えるような真っ赤な花が咲いていた。


この花の名前は俺も知ってる。「サルビア」だ。


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