Colors of Heart ~7色のハート~


ちょっと高い位置に建てられたこのカフェ、下を覗くと通りを行き交う人々が見えた。


テラス席から店内へ入るガラス戸は、今日は雨が降っていないからか開けっ放しになっていた。


オーストラリアの気候は乾燥しているので、気温が上がってもカラッとしていて不快感は少ない。


カフェの周りに大きな木が何本か植わっているせいか、木陰があちこちに出来ていて、冷房いらずの心地よい空間になっていた。


外から店中を覗く。


その部屋は花に埋もれていた。


部屋の真ん中に作業用のテーブルが置かれ、そのテーブルを囲うように花器に活けられた花々が所狭しと、咲いていた。


慌ただしい店内で、ここだけ静かに時間が流れてる。


店の奥はテラス席同様、お客さんで賑わっていた。


ウェイトレスの女性が、料理のプレートを手に、忙しそうに店内を行き来していて、声を掛けるのを躊躇う。


朱羽子(しゅうこ)さんはどこだ?とサングラスを外し、店内を見渡した。


「Benitora!」


突然、大声で名前を呼ばれ、驚いて振り返った。


ヘーイ!とテンション高めの掛け声からのハイファイブ。バチンと互いの手の平が鳴った。


いてー。相変わらずこのオッサン、力強いなーと徐々に赤らんでくる手のひらを見て思う。


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