Colors of Heart ~7色のハート~
「元気だったか?」
「なんだ?あんまり見かけは変わってないな」
「暫く顔を出さないで、こっちには帰って来てたのか?」
「ところで、いつ帰って来てたんだ?」
「スムージー作るけど飲むか?」
イタリア訛りの英語で、相手に話す隙を与えないマシンガントーク。
彼の名前はFred、このカフェのオーナーだ。
白髪交じりの坊主頭に、フレームが太めの黒ブチメガネを掛けている。
Tシャツにジーンズ姿のカジュアルスタイルで、ベルトのバックルがへその辺りで光ってる。
いつもニコニコと笑みを絶やさない。
俺が子供の頃から見た目はあまり変わっていない気がする。
「Where's your wife?」
そう訊ねると、「Oh」を声を上げて、店の奥を指差した。「彼女はレッスンの途中さ」とウインクを投げ掛ける。
「レッスン?あぁ、そうか」と納得しながら、店の奥に進む。
「Fred___」と話しかけた所で、彼はすでにテラス席の常連客と会話を楽しんでいた。相変わらずの自由人っぷり。
明るい店内には、各テーブルを始め、所々に花が活けられいる。食事を味わいながら、お喋りに夢中の客席を通り抜けると、右手に中庭が見えた。