Colors of Heart ~7色のハート~
中庭と言っても、6人掛けの長テーブルを置いたら、いっぱいになる位の面積だけれど。
こういうのって何て言うんだっけ?ネコノヒタイだ。
中庭は何故か和風になっていた。
細い竹が隣の建物への目隠し代わりの壁のように、びっちりと植わっていて、隅には石で出来た器とシシオドシが置いてあり、その中では金魚が2匹泳いている。
テーブル席には6人の女の人が向かい合って坐り、テーブルに置かれた花器に向かって真剣な顔つきで、花を活けていた。
朱羽子さんはこのカフェのオーナーFredの妻であり、フラワーアーティストでもあった。
シドニーでは、割と有名な日本人のフラワーアーティストで、大学の教員室や、空港のロビーの生け込みなども外注の仕事として、こなしている。
このカフェはカフェ兼フラワーショップで、朱羽子さんは週に何回か、このカフェでフラワーアレンジメントの教室を開いていた。
朱羽子さんと俺の母親が知り合いなので、彼女は俺を赤ん坊の時から知っているし、彼女がFredと結婚して、花カフェをオープンさせてからは、何度もここに足を運んでいた。
彼女と会うのは、4年ぶりになる。
「朱羽子さん」
席を周り、生徒たちにアドバイスをする朱羽子さんに、中庭へと続くガラス扉から顔を出し、声を掛けた。