Colors of Heart ~7色のハート~


「今、着ちゃってるじゃない。見つかったら大変な目に遭っちゃうんじゃないの?」

 
少年を心配して訊いてみた。

 
「お姉ちゃん、小6なんだ。中学受験するから、今の時間は塾に行ってて、暗くなってからじゃないと帰って来ないの」

 
なるほど、そういうわけなのね。

 
少年はお姉ちゃんが留守の間に服を借りて「男の娘」に扮装するらしい。


訊けば、住む家は川原を渡った向こう側に建つマンションなのだそうだ。


家の近くだと知っている人に遭うかもしれないと、わざわざこの公園まで歩いて来てるらしい。

 
「そういうワケなんだ?」

 
うんと少年は頷く。

 
「ボクを知らない人がいる所でボクがどう見えるか知りたかったんだ。そこで野球をしてる子たちはボクをどう思ってるんだろうって考えてる。さっき言ったみたいに、お婆さんとかに「かわいいお嬢ちゃんね」って話しかけられると、やっぱりボクにもかわいい格好は似合ってるんだって自信になるんだ」


「へぇ、そんなにかわいい格好がしたいならそんなブカブカのお姉ちゃんの服を着てないで、お母さんに自分用を頼んでみたら?」

 
「できないよ、きっとお母さんはボクがどうかしちゃったんだって思うよ。お姉ちゃんみたいにキモチワルイって言って、ボクを病院に連れて行くかもしれない」

 
お姉ちゃんに言われた一言が少年のトラウマになってしまっているようだった。


だから誰にも言わずにこっそりと「男の娘」を楽しむ。


「よっしーはおかまだよね?女の人の格好はしないの?」

 
「だからおかまは余計だって言ってるじゃない。女装はしたいとは思わないわね。かわいいものは好きだけど。私はただ、男の人が好きなだけ。君は別に男の子が好きなワケじゃないんでしょう?」

 
うんと少年は大きく頷く。


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