Colors of Heart ~7色のハート~
そうね、お母さんの言うことは解るわ。
大人の世界は少年が思うより複雑で難しいのだ。
「でも、よかったわね。念願のかわいい服を買ってもらえて」
うんと少年は大きく頷き、ぽんと縁から飛び降りると私の隣に座った。
「お姉ちゃんもさ、ボクの格好を見てかわいいって。変だよね?前はキモチワルイって怒ったくせにさ、全然覚えてないんだ。そんなこと言ってないって怒るんだ」
「傷つくようなことを言われたら言われた方はずっと覚えているものだけど、言った方って案外忘れてしまうものなのよ。だから、君もお姉ちゃんが昔言ったことは忘れちゃえばいいのよ。君はお姉ちゃんのことが嫌い?」
「ううん、好きだよ」
「そう、だったら忘れちゃいましょう。許すってことは君が大人な証拠よ」
ぱちりとウィンクをすると解ったと少年は大きく頷いた。
両足を閉じてスカートの裾を気にする少年の前に小さなクーラーボックスを差し出した。
「何これ?」
少年が目を丸くしてクーラーボックスを手にする。
「君が勇気を出せたご褒美よ。開けてみて」
少年は頷くと太ももの上にクーラーボックスを乗せ、蓋を開けた。
「うわぁ」と感嘆の声が漏れる。
「かわいい~、何これ?」
敷き詰められた氷の中に透明なプラスティックのグラスが2つ立っている。