Colors of Heart ~7色のハート~
「大丈夫よ、私には竜ちゃんが一番だから」
そう言って、竜ちゃんの腕を取って、通りに出た。
竜ちゃんは照れているのか頭の後ろを掻きながらゆっくりと立ち上がった。
「幸せの道」が夕陽色に染まってきた。
水色とオレンジが水彩画のように交じった空の色、篭った夏の空気の匂い。
それでも高く空に向かって枝を伸ばすサルスベリ。
「この木ってなんていうのかな?」
ふと通りの木を見上げて立ち止まった竜ちゃんが訊ねる。
「枝の両側に交互に丸い葉っぱがついてて、枝の先にはくしゃくしゃっとした花?がついてる。僕の田舎にもあった気がするけど、そういえば何ていう名前か知らなかったな」
「サルスベリっていうのよ。漢字で書くと百日紅、字の通り、紅色の花が長く楽しめるって意味らしいわ」
「サンゴちゃんと付き合うようになって、草花に詳しくなった。何気なく咲いてる花にも季節を感じられるようになったし、サンゴちゃんのおかげで僕の見る世界が広がった気がするんだ」
そういってはにかむように笑う竜ちゃんはとてもチャーミングだった。
思わず抱きしめたくなる位。
「やめてよ、何?急に改まって」
照れ隠しにそう言うと、竜ちゃんはくすりと笑った。
「このサルスベリが並ぶ通りをサンゴちゃんと歩いていると、すごく幸せな気持ちになるんだよ。それがすごく嬉しくて、サンゴちゃんも僕と同じ気持ちだったら嬉しいなって」