Colors of Heart ~7色のハート~


下書きをしない、ダイナミックな描き方は絵画教室の時のままだ。


迷いなく紙を貼り続けるもっさんが何だかとても男らしく思えた。


 
「・・・すごい」

 
出来上がったもっさんの模写に美術の先生は息を飲んだ。


限られた紙の色で作ったので、色彩は元の絵よりもだいぶ明るめになったし、もともとは点描の繊細なタッチで描かれたスーラの絵にしては目が粗い。


けれど、細かく契った貼り絵は絵画を見事に再現していたのだ。

 
「君は山下清の再来かもしれないぞ!」と興奮気味に美術の先生が語ったのを覚えている。


 

その後、美術の先生の推薦でもっさんと僕は県内で美術系の学科がある高校に進んだ。

 
もっさんはその後もめきめきと頭角を現していった。


彫刻の授業では、角の先が森になっている牡鹿を木に彫り、もっさんにしか表現できないであろう世界観と、鹿のリアルさにクラスのみんなが感心してたし、課外授業で陶芸家の先生の下で体験学習をした際に、「君は10年に1人に逸材だぞ。弟子にならんか?」と誘われていた。

 
ただ、もっさん自身が「○○展で入賞する」とか「絵を描いて食べて行きたい」とか将来に関する欲が一切なかった。


絵が好きだから描いている。


物を造るのが好きだから造っている。


そんな感じだ。


結構、気まぐれで、興味のない授業だと途端にやる気をなくし、居眠りを始める。


そして、飽きっぽい。


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