Colors of Heart ~7色のハート~
「すごい」
思わず目を見開いた。
「へへ、親父の知り合いに芝桜祭りのポスターを描いてみねぇかって言われて作ってみたんだ」
僕の住む街は焼きそばと春になると丘一面に花を咲かせる芝桜で有名だった。
ポスターには青い空にぽっかりと浮かぶ雲。
それに丘一面に咲き乱れる芝桜が描かれている。
白、ピンク、濃紅。
芝桜の花びらの一枚一枚まで細やかな貼り絵で表現されていた。
「また進化した。ここまでいくと神業だ。これ完成するのにどれ位かかったの?」
「わかんねぇ、作ってる時は楽しくて時間を忘れちまうからな」
お土産にともっさんは筒ごとポスターを僕にくれた。
「すごいな、貼り絵で見事な立体感だよ」
「花びらんとことか雲の陰の辺りは折り紙をこよりにして細い棒みたいにしてんだ。そうすっと立体感が出るんだってさ。清もそうしてたらしい」
清とはもっさんの尊敬する画家、山下清のことだ。
もう亡くなってだいぶ経っているし、もっさんと比べるとずっと年上の人なのに、友達のような気軽な呼び方になってしまっている。
僕はポスターの隅々まで目を凝らす。
進化するもっさんの才能に嫉妬を覚える。
それと同時に伸び伸びとした環境にあってこそ、こんな素晴らしい作品が作れるのだなと納得もする。