Colors of Heart ~7色のハート~
「もう、こうなったらこんにゃく芋農家の貼り絵を四季毎に描いていったら?ミレーみたいになるかもよ?」
「あれは貧しい農民の姿を宗教画チックに描いてるところがいいんだ。キャンバスから哀愁が漂ってるだろう?ダメだよ、飲んだ暮れてる陽気なおっさんの日常を描いたって」
でもこんにゃくの苗がわさわさと生えてる畑を描くのはいいなと右手をアゴに添えて考え出した。
話しているとあっという間に電車が終点の高尾山口駅に着き、僕らは電車を降りた。
改札口を抜けると、茹だるような暑さに思わず顔をしかめた。
売店には登山グッズが並び、山登り用の靴も売っていたので、もっさんに薦めてみたけれど、「いいよ、このままで」と一蹴されてしまった。
観光客の流れに乗って、道なりに進むと、お土産屋と飲食店が並ぶ通りに出た。
その先が高尾山への入り口になる。
わらわらと集まる観光客に紛れて、案内板を見上げる。
散策のコースがいくつもあるみたいだ。
もっさんがビーサンだから、途中まではケーブルカーに乗ることにしよう。
個人的にはつり橋があるコースに興味が惹かれる。
「途中までケーブルカーで登って、山頂を目指そうか。帰りはこっちのつり橋のある登山コースを歩いてみたいな」
僕の提案にもっさんは「いいよ」と即答した。
辺りを見れば、本格的に山登りの格好をしている人はちらほらで、後は軽装で、カップルなんかはサンダルの人もいた。
逆に動きやすい登山向きの格好をしてきてしまった自分が恥ずかしくなる。