Colors of Heart ~7色のハート~
「何、いきなり、何?」
リュックのサイドポケットに突っ込んであったミネラルウォーターを捻り、流し込んだ。
首にかけたタオルで口元を拭うと、隣でおやきを食べ終えたもっさんが僕を見ていた。
「いや、だって、草ちゃん、遊びに行くんでも家でも学ジャーだったじゃんか。楽だとか言って。久しぶりに会ったら何だかすごくオシャレさんになってたからびっくりした。カノジョでも出来たんか?」
そう言われて僕はぐっと口をつぐんだ。
真新しいスポーツウェアに流行りのカラフルなスニーカー。
確かに今までの僕は服や装飾品を気にしたことがなかった。
ボロでお古でも着れればいいし、靴は穴があいたら次のを買えばいいやと思っていた。
それよりも絵を描くこと、僕の世界を表現することが一番だったんだけど____
「行こうか」と僕はおやきを食べ終えると、立ち上がった。
観光客の列に並んで歩き出す。
杉並木を歩く。
舗装された通路の端に朱塗りの灯篭がぽつぽつと並んでいる。
針葉樹が作る木陰はひんやりとしていて少し寒い位だ。
もっさんはビーサンにも関わらず、僕の少し先を歩く。
ふと大きな杉の前で立ち止まり、樹形が面白いのかじっくりと眺めている。
「本当は、失恋したんだ」