Colors of Heart ~7色のハート~
帰りのコースは僕の希望であるつり橋を渡る順路を選んだ。
山頂に向けて舗装された道と比べると、こちらの道は土がむき出しで足場の悪い所もありそうだ。
人気もない。
ビーサンのもっさんは足場も気にせずに、ぐんぐん道を進む。
熊笹の生い茂った山中を、たまに木々の間から覗く木漏れ日が照らしている。
前方から歩いてくるお爺さんに会釈をし、すれ違った所で、もっさんがポンと切り株に飛び乗った。
「草ちゃんは、失恋して絵が描けなくなったりするんか?」
こちらを振り向き、訊ねる。
「描けないことはないなぁ。描いている時にぼんやりとその子を思い出すことはあるけど」と返すとそっか
ともっさんは項垂れた。
「前に、屋久島から絵葉書くれたろ?俺、あの時の草ちゃんの絵見て鳥肌立ったよ」
ぼそりともっさん続ける。
「草ちゃんは東京に行って、どんどん絵が上手くなってて、しかも色んな所に旅行に行くたびに送ってくれる手作りの絵葉書は立派な間草(はざまそう)の作品になってる。草ちゃんは進化してるのに、俺は田舎にいてくすぶってるんだ。自分で選んだ道だけど、俺には今の姿が合ってるって思うけど、やっぱり草ちゃんに嫉妬してるんだ」
何言ってるんだ。
もっさんの方が僕よりずっと凄いのに・・・
「だから、草ちゃんに会ったら、俺もまた作品を作る気になるんじゃねぇかって、いい刺激になるんじゃねぇかって、ここまで会いに来たんだ」
そう言ってもっさんはにっこりと笑った。