Colors of Heart ~7色のハート~
俺は学ランの袖で口元を拭った。
ぴりっと痛みが走り、思わず顔をしかめる。
「血が出てる。絆創膏持ってるから貼ってあげる。待ってて」
ユズキは学生カバンの中から絆創膏を取り出した。
オレンジ色のクマがついたガキが使いそうな絆創膏だった。
「雷音(ライオン)のサブがこんなダセェ絆創膏つけてられっかよ!マジ、バカにされっからヤメロって」
「文句言わないの。じっとしてて、つけてあげる」
凄みを利かせても、この女には通用しないようだ。
言い出したら聞かないのも17年の付き合いで知っている。
俺は下唇を突き出して、不貞腐れた表情のまま、ユズキに付き合った。
「これでよし」
満足そうに笑う、その横顔に釘付けになる。
少しだけほっこりとした気持ちになる。
ユズキと一緒にいる時間は居心地がよく、こそばゆい。
ズボンのポケットに入れたケータイがブルブルと鳴り、俺は我に返った。
メールを確認すると舌打ちをして、ベンチから飛び降りた。
残りのカフェオレを飲み干すと「ごちそうさん、捨てといて」と空の缶をユズキの傍らに置いた。
「どこ行くの?」
手にしたミルクティーの缶で指先を温めながら、ユズキが心配そうに訊ねる。