Colors of Heart ~7色のハート~
オウスケが叫んだけれど、ユズキを乗せたバイクは走り去ってしまった。
「女を返して欲しければ、銀杏公園に来い」
山吹は捨てゼリフを吐いて、笑いながら、エンジン音と共に消えていった。
バイクが走り去ると、だだっ広い校庭に砂煙が立つ。
「あ~、クソッ!!」
やるせない思いを地面に叩きつけて、オウスケが叫んだ。
銀杏公園は俺たちの学校の近くにある、名前の通り、イチョウの並木道があることで有名な公園だった。
小さな池を囲むように、イチョウの木々が連なる。
都会の喧騒の中にある静かなオアシスといった所だろうか、俺はこの場所が好きでよく(サボリに)来ていた。
午前中の早い時間なら、公園内を散歩する子連れの若い主婦や、老夫婦などを見かけたりするのだけれど、バイクのエンジンを鳴らして、見た目ガラの悪い奴らが園内に現れたと同時に、利用者は蜘蛛の巣を蹴散らすようにいなくなったみたいだ。
黄金色の絨毯で埋め尽くされ、すっかり秋色に染まった銀杏公園内に人気はなかった。
俺たち雷音はオウスケを先頭に園内に入っていった。
黄色い落ち葉に蒲高の黒い学ランが映える。
虎みたいな色だなと思った。
オウスケの背中に声を掛けることは出来なかった。
それ位、怒りに満ち溢れて殺気立っていた。
前を歩くオウスケがぴたりと立ち止まった。