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バイトのこと、学校のこと、色々話を聞いてた。

聞いてたフリをしてた。

向こうが笑えばわたしも笑ってみせる。

でも上の空でなんのこと聞いたか頭には入ってない。


だってわたしは…帰る用事をずっと考えてたんやから。


店に入って1時間半くらいたったかな。

思い切ってわたしは言った。



「しんくん、ゴメン。実は今日、お母さんが具合悪そうやったんよ。さっきメールで聞いたけど返事がないから心配で…。やっぱり帰ってええかな??」


女優になれるんやないかってくらい心配したような声で言った。

すこし眉を下げながら。


「え、ホンマ!?もちろんええよ。心配やな。」


そう言ってしんくんは立ち上がった。

わたしもまたゴメンって言って立ち上がり、バッグを手に取る。

しんくんは2人で食べたものを持って片付けるところに持っていった。


「こんなときに俺誘ってごめんなぁ。」


普通心苦しくなるよな。

嘘ついて、謝らせるなんて最低やわ。


でもこのときは”よかった。”って気持ちが大きくて本当にお母さんが病気になったような気さえしてた。
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