【完・短編】君だけに~不器用サンタクロース~






『この前、電話したのはお母さんに言われたからなの』





そう言うと有紗は突然立ち上がった。





乗り手を失ったブランコは不気味な音をたてながらむなしく揺れる。


それもすぐに止まり、静寂が俺らを包む。







ピンクのコートを着た後ろ姿が震えている気がするのは俺の気のせいなのだろうか?







『それがね、お店のお得意さんがあんたのこと気に入ったから……私にその人と…そ、の…』





「もう、良いよ。良いから、有紗」








俺も立ち上がって震える有紗を抱き締めようと腕を伸ばしたとき…







『でも…!私はいらない子だからそれで親孝行が出来るかなって一瞬、思っちゃったんだよね』





ピタリと動きが止まって、俺の腕は行き場を失ってだらしなく垂れ下がる。











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