【完・短編】君だけに~不器用サンタクロース~
だから俺は、有紗に会えた。
そして俺は
「そのおかげで、どうしようもなく愛しいと思えるやつに会えた」
強がりで素直じゃなくて。
そのくせ寂しがり屋で。
弱さを見せるのが苦手で。
だけどそんなところも含めてどうしようもなく愛しくて。
「俺、有紗が好きだよ」
どうしたら良いか分からないくらい、有紗が好きだ。
好きで、好きで、仕方がない。
『……樹くん』
「たとえ有紗が自分を嫌いでも俺は好きだから。俺は、俺だけは。絶対に嫌いになったりしないから。離れたりなんかしないから。
どんな有紗も
───愛してるから」
そう言って俺は、そっと後ろから有紗を抱き締めた。
愛してる。だなんてちょっと背伸びしすぎたかもしれない。
高校生の俺はもしかしたらまだ、ほんとの愛なんて知らないのかもしれない。
だけど、こんなに愛しいと思える感情を表す言葉が他に見つからないんだ。