アロマな君に恋をして

「……なずなさん」

「は、はい……」


……思わず敬語になってしまった。

だって麦くんの声が怒ってるかのように低いんだもの……


「それ、危ないからどこかに置いて下さい」


それ、と彼が指差したのは、私の手に持ったお盆。

なんで危ないのかと本当は聞きたかったけれど、いつもと違う麦くんが怖くて私は言われた通りローテーブルにお盆を置いた。


「……もう一度聞きます。このイランイランはどこでどんな状況で使おうと思ったんですか?」


体がだるいのか、麦くんはベッドに荒々しく腰を降ろしてから私に訊く。


「そ、それ、さっきと質問違う……!」

「答えてください」


びくっと肩を震わせた私。まるで蛇に睨まれた蛙だ。

私は足元の絨毯を見つめながら、小声で呟く。


「……場所は……麦くんの家で……」


そこまでは、何とか言える。

だけど状況って……

“眠る前にこっそり焚いて、あなたをその気にさせようとしました”

だなんて……

言えるわけないよ、そんなこと……


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