アロマな君に恋をして
ドキドキと、二つの鼓動が重なる。
……麦くん、熱い。こんなに喋ってて大丈夫なのかな?
私の心配をよそに彼が耳元で囁く。
「その人、やな感じします……」
「あぁ……うん、すごく嫌みな人だったよ」
「そういう意味じゃなくて」
「え?」
「……いいです。なずなさんは知らなくて」
ふっと身体の熱が離れたと思ったら、それよりももっともっと熱い唇が私の唇を塞いだ。
この間の羽根が触れるような優しいキスとは違って、私の口をこじ開けようとするような、無理矢理なキス。
「……ふ、ぁ」
息継ぎと同時に声を漏らした私を見て、麦くんは悪戯っぽく笑った。
「――理性を抑えなくていいなら、俺だって遠慮しませんよ?こんなの、必要ありません」
麦くんは精油の小瓶を床に放り、一気に顔つきを大人っぽく変化させると空いた手で私の頬を撫でる。
でもしばらくするとその動きはぴたりと止まり、彼はいつもの表情に戻ってこう言った。
「もちろん、なずなさんが望むなら……ですけど」