アロマな君に恋をして
――この子はどうしていつも。
「ずるいよ……」
私はキスの名残で濡れた唇を尖らせた。
「……麦くん、ずるい」
だって、いつもいつも恥ずかしい台詞は私担当な気がする。
私がどうしたいか知ってるくせに。むしろ、私より先に気づいてるくせに。
「じゃあ……その顔を見て、勝手に解釈しちゃっていいんですか?」
訊きながら、私の前髪を留めてたゴムを外す麦くん。
きっとカッコ悪い癖がついているであろうその髪を梳かれながら、私は呟いた。
「もっと、ちゃんとした格好の時がよかったな……」
「あぁ……なずなさんノーブラですもんね今日」
「な、なんで知って……!!」
「玄関からここまで連れてきてもらう時に気づきました。ほんと無防備過ぎですよ。俺だって男なんですからね?」
「……うん。わかってるよ」
意外としっかりした胸板。
私の抵抗なんかものともしない力の強さ。
そしていつもは小動物みたいに可愛い瞳が、今は男の人にしか出せない色気を醸し出しているから……