アロマな君に恋をして
「……どうして話さないの?」
つかつかとこちらに歩いてきたオーナーはロッカーに片手をついて身を屈め、私の顔を覗き込む。
「どうしてって……行く気がないんだから話す必要ないじゃないですか。彼には余計な心配かけたくないんです」
「……ただ言うのが怖いんじゃなくて?」
――ズキン、と胸に鈍い痛みが走った。
何も言い返すことができない私に、オーナーはため息をついた。
「本当のことも話せない関係なのか、その彼とは」
「……そんな言い方しなくたって……」
「でも図星なんだろ?話したら別れようとでも言われそうなの?」
「…………」
もしも、麦くんに話したら……きっと、その逆だと思う。
「……背中、押される気がします。行ってらっしゃいって」
「じゃあ何も問題ないじゃないか」
「それが嫌なんじゃないですか!!」
急に声を荒げた私に、オーナーは目を丸くした。