アロマな君に恋をして
「ご、ごめんなさい……!」
すぐにそこから出ようとしたのに、背中に回されたオーナーの腕がそれを許してくれなかった。
「オ、オーナー……?」
「僕の一番好きなアロマは、ブラックペッパーなんだ」
「…………?」
よく意味がわからない。
目の前のジャケットから香ったのは、確かにそんなスパイシーな香りだったけれど。
「――きみとなら、そういう関係が築けそうな気がする」
「…………はい?」
とりあえず、早く離してくれないかな……
麦くん以外の男の人に抱き締められるのは、ものすごく不本意だ。
「互いが互いのプラスになるよう、常に刺激し合える関係。仕事においても、恋愛においても、お互いを高め合えるかけがえのないパートナー。
僕の理想の恋人とはそういうもので、つまりはきみと、そうなりたいってことだ」
……え?
聞き間違いかと思って顔を上げると、オーナーはにっこり笑って私を見てた。
「……きみの仕事ぶりと、それとは対照的な不器用さに惚れたよ。それに見た目も……」