アロマな君に恋をして
アシスタントの女性が大きな箒で私の足元の髪を掃く。
ハサミで切られているときは実感のなかった長さと量が目に飛び込んできたので、私は慌てて読んでいた雑誌から視線を上げた。
「……顔ちっちゃいから短いのも似合うね」
鏡の中で微笑む美容師さん。
そこに映る私は間抜けな顔で、肩に届かないほどの長さまで切られてしまった髪を見つめていた。
「スタイリング剤付けてもいいかな?」
「あ……はい」
毛先にワックスをくしゅくしゅ揉み込まれて、顔まわりの髪がふんわりした形になる。
前髪を整えられ、最後にスプレーで仕上げをされると、そこには見たことのない自分が映っていた。
これ……私?
「あら!随分可愛くなったじゃない!」
背後で満足そうに手を叩くのは緒方さん。美容師さんがそうでしょう?と得意気に言う。
確かにほんの少しだけ……前の自分よりは良くなったような気がする。
疲れた20代後半の顔は変わらないのに、不思議……