アロマな君に恋をして
その人は、数日後の閉店間際にうちのお店にやって来た。
最後のお客さんだった女子高生が小さな輸入菓子を買って店を出るときに、入れ違いで入ってきた30代くらいの男性。
なんとなく、直感で……
お客さんではないなと思った。
それを裏付けるように、彼は店内の雑貨には目もくれずに俺の方へ向かってきた。
「――突然申し訳ない。“麦”って名前の人を探してるんだけど、この店にいないかな?」
「……俺ですけど」
「ああ、やっぱりきみか。店に入ってすぐそんな気はしてたんだ。聞いてた通りのいい男だったから」
聞いてたって……誰に何を?
いきなり親しげな笑みを浮かべ、嘘くさいお世辞を口にする目の前の男の正体がわからず、俺は眉をひそめた。
そんな俺の様子に気づくと、彼は胸ポケットから名刺を取り出して俺に差し出す。
「申し遅れたね。僕はきみの彼女の働くアロマショップ“juin”を経営している徳永という者だ。よろしく」
「……あなたが」
なずなさんの店のオーナー……
とりあえず正体はわかった。
でもどうして俺に会いに?