アロマな君に恋をして
その理由は、徳永さんの次の言葉ですぐにわかった。
「その為に、僕は彼女にイギリス留学を提案した」
「イギリス……?」
そんな、遥か遠い国の名前が出てきたから。
……なずなさんが俺に言いづらかったのは、きっとそのせいだ。
「ああ。日本でも学べることは学べるが、向こうに比べるとアロマもハーブもまだ日常生活になじんでない。イギリスで、生活に根差した知識を得ることは彼女にとって価値がある。
それに僕自信も、経営者として本場で学びたいことがたくさんあるしね」
“僕自信も”――って?
まさか……
「あなたも一緒に行くんですか?」
「ああ、そのつもりだよ」
「……期間は?」
「はっきりとは決めてないけど……半年くらいかな」
なずなさんと、徳永さんが、半年ふたりでイギリス……
受け入れろという方が無理だと思う。
俺は当然湧いた嫉妬心から、こんなことを言った。
「徳永さん、なずなさんに対して下心があるんじゃないですか?」
じゃなきゃ、二人でイギリスへ行くなんて発想には……
「――もちろん、あるよ」
徳永さんの声のトーンが下がった。
そして俺に向けられた挑むような視線……
この人、俺に宣戦布告をしに来たんだ。
俺も負けじと、同じくらいの高さにある彼の目を鋭く睨んだ。