アロマな君に恋をして

その理由は、徳永さんの次の言葉ですぐにわかった。


「その為に、僕は彼女にイギリス留学を提案した」

「イギリス……?」


そんな、遥か遠い国の名前が出てきたから。

……なずなさんが俺に言いづらかったのは、きっとそのせいだ。


「ああ。日本でも学べることは学べるが、向こうに比べるとアロマもハーブもまだ日常生活になじんでない。イギリスで、生活に根差した知識を得ることは彼女にとって価値がある。
それに僕自信も、経営者として本場で学びたいことがたくさんあるしね」


“僕自信も”――って?

まさか……


「あなたも一緒に行くんですか?」

「ああ、そのつもりだよ」

「……期間は?」

「はっきりとは決めてないけど……半年くらいかな」


なずなさんと、徳永さんが、半年ふたりでイギリス……

受け入れろという方が無理だと思う。

俺は当然湧いた嫉妬心から、こんなことを言った。


「徳永さん、なずなさんに対して下心があるんじゃないですか?」


じゃなきゃ、二人でイギリスへ行くなんて発想には……



「――もちろん、あるよ」



徳永さんの声のトーンが下がった。

そして俺に向けられた挑むような視線……

この人、俺に宣戦布告をしに来たんだ。


俺も負けじと、同じくらいの高さにある彼の目を鋭く睨んだ。


< 123 / 253 >

この作品をシェア

pagetop