アロマな君に恋をして
客観的に見て、徳永さんはとてもカッコイイ男の人だと思う。
年相応の落ち着いたオーラがあって、顔は甘いマスク。
コートもマフラーも革靴も、きっと俺なんかには買えない高いやつ。
背も高いし(でも、履き古したコンバースを履いてる俺と同じくらいだから、俺の方が勝ってると思う)、声は低くてよく響く。
――でも、だから何だっていうんだ。
なずなさんを好きだっていう気持ちなら、絶対誰にも負けない。
「……もしも彼女がイギリス行きに同意してくれたら、僕は結婚を申し込むつもりでいる」
徳永さんが、長めの前髪をかき上げながら言った。
今、なずなさんの恋人であるのは俺なのに、勝手にそこまで考えている彼に心底腹が立った。
「なずなさんは行かせません。それに結婚って……気が早すぎますよ。そうでなくてもなずなさんは恋愛に臆病な人です。そういうことは慎重に運ばないと、彼女を傷つけることにもなるし……」
早口で一気にまくしたてた俺。
俺の方がなずなさんをよく知ってると、彼に知らしめたかった。
だけど徳永さんの口から漏れたのは……敗けを認める言葉なんかではなくて。
「――なるほどね。そうやって彼女を甘やかしてるのか」
呆れたように吐き出された、そんな言葉だった。