アロマな君に恋をして
「……どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味だよ。きみと一緒に居れば彼女は幸せなのかもしれないが、その代わりにきっと自分の足で立てなくなる。
何をするにもきみを頼り、きみの顔色を窺い、きみの意見を優先して……僕としてはそんなつまらない女に成り下がって欲しくはないんだけどね」
「――なんですって?」
ここまで頭に血が昇ったのは初めてで、抑え方もわからない俺は徳永さんの胸ぐらを掴んだ。
それでも慌てる素振りを一切見せない彼に余計腹が立ち、拳を振り上げた時だった。
「――馬鹿、やめろ、麦!!」
店の奥から出てきた店長が、俺を無理矢理徳永さんから引き剥がして床に叩きつけた。
幸い商品に被害はなく、俺の身体が少し痛むだけ。
「申し訳ありません、うちの大久保が……!」
ゆっくり身体を起こすと、店長が深々と徳永さんに頭を下げていて、店長に申し訳なくなった。
本当は俺が謝るべきなんだろうけど……
「いえ。僕が失礼な発言をしたのが悪いんです。彼が怒るのも無理はない」
絶対にそんなことを思ってないくせに大人な対応をする姿にカチンときて、絶対謝りたくないと思った。