アロマな君に恋をして

店を閉めて店長と別れたあとで、俺は歩きながらなずなさんに電話をした。

北風が冷たくて、吐き出す息が白い。


「――なずなさん、もう家?」

『え、まだだけど……もうすぐ着くよ』

「じゃあ、帰ったらお泊まりセット持ってうちに来てくれませんか?」

『え?……いいけど明日はお互い普通に仕事だよね』

「それでも、逢いたいんです」


俺の言葉のあとに少し、間があった。

電話の向こうでなずなさんが照れてるんだと思うと、自然と口許が緩む。


『……わかった。急いで準備して行くね』

「待ってます。気を付けて来て下さいね」


電話を切ると携帯をポケットにしまい、家に向かう足を早める。

――なずなさんにイギリス行きの件を聞いたら、どんな反応をするだろう?

行く気はないと、はっきり言って欲しいという気持ちと、もしも行きたいと言われてしまったらどうしようという気持ちが混在する。


なずなさんを信じてないわけじゃない。

ただ、あのオーナーの自信満々な態度が嫌でも胸に引っ掛かっる。


ねぇ、なずなさん。

行くなんて、言わないよね……?


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