アロマな君に恋をして
美容室を出ると、そのまま洋服屋さんや雑貨屋さんの立ち並ぶ通りを二人で歩いた。
散り始めたイチョウの黄色を踏み締める感触を楽しんでいると、緒方さんがにやにやしながら私の顔を覗き込む。
「やっぱり良かったでしょ?髪型変えてみて」
「……はい」
素直に頷くのは少し悔しかったけれど、本当のことだから仕方ない。
失恋したら髪を切る女の人の気持ちが今なら解る気がする。
髪と一緒に心の中の不純物が、どこかへ消えてしまった感じがするもの……
「そろそろお昼よねー。どこかで何か食べよっか」
「そうですね、お腹すきました」
緒方さんがよく行くというカフェを目指して歩き出した瞬間、携帯の着信音が私たちの会話を遮った。
私のじゃないから、きっと緒方さんのだ。
「ちょっとゴメンね。――もしもし?」
私は通話しながら歩く緒方さんの隣で、着いたら何を食べようかなぁなんて呑気なことを考えていたのだけれど。
電話を切った緒方さんは何故か申し訳なさそうな顔で、パチンと両手を合わせた。