アロマな君に恋をして

「……麦くん」


優しい声が、俺を呼んだ。
少し腕の力を緩めると、なずなさんの柔らかい両手が俺を包み込み、短いキスがふわりと触れた。


「私はどんな麦くんでも好きだから……だから、思っていることを言って?」

「なずなさん……」

「いつも私ばっかり甘えさせてたら、麦くんだって疲れちゃう。それに、あなたの弱いところも見たいの。麦くんの全部、私に教えて?」


俺は、しばらく悩んだ。

言ってしまっていいのだろうか……この間、一年待つと言ったばかりなのに。

嘘つきだとか、詐欺だとか言われたらどうしよう。

それでも……今、どうしようもなくなずなさんが欲しい。


俺はソファの上で居ずまいを直し、彼女を正面から見つめて言う。


「正直に言います。……我慢、できなくなりました」

「我慢……?」


彼女は意味が解らなかったようで、首を傾げる。


「……そっか。なずなさんってこういう言い方じゃ伝わらないんですよね……」


きょとんとした表情で俺を見ていたなずなさんの耳元に、唇を寄せた。

そして至極わかりやすい言葉を、俺はささやく。



「――なずなさんを、食いたいです。今すぐ」



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