アロマな君に恋をして
俺が物心つく前に父は病死していて、母は俺を育てるために昼はスーパー、夜はスナックで働き通しで、家の仕事も手を抜いてなくて。
寂しい思いはもちろんしていたけど、いつも元気によく働く、自慢の母親だった。
その元気な顔が、俺に心配をかけまいとする偽りの仮面だったなんて知らなかった。
ある日母は、勤務先のスーパーで倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
原因は、過労だった。
あとでばあちゃんから聞いた話によると、随分前から調子が悪そうだったからスーパーの店長や同僚たちは休むように言っていたのだと言う。だけど母はそれを拒んだ。
“麦が、クリスマスに高価なゲーム機を欲しがっているから、頑張らなくちゃ”――そう言って、笑ってた、と。
俺はその時小学四年生で、クラスメイトの大半が持ってる携帯用のゲーム機が欲しくてたまらなかった。でも、母にねだったわけではない。
まだサンタクロースを信じていたから、手紙を書いて、それを母に渡してあったのだ。