アロマな君に恋をして
カチャ、とバスルームの扉が開いた音で、俺は我に返った。
『まだ立ち上がれないから先にお風呂どうぞ』
そう言ってはにかんだなずなさんをリビングに残し、俺は先にシャワーを浴びてバスタブに浸かっていた。
本当なら俺が上がったら呼びに行こうと思ってた。
だって、なずなさんが一緒に入ってくれるなんて思いもしなかったから……
俺は視線の先に彼女が居るのが信じられなくて、しばらく固まってしまった。
「いい香り。グレープフルーツ?」
「……あ、はい。勝手に入れちゃいましたけど大丈夫ですか?」
「うん、好き」
グレープフルーツは元気のでる精油。
さっきの行為でちょっと自信喪失気味だった俺は、それをバスタブに数滴たらして自信を取り戻そうとして……いや、そんなことよりも。
俺は目の前でシャワーを浴び始めた彼女の綺麗な体を眺めながら、声を掛ける。
「一緒にお風呂、なんて言ったらなずなさん絶対に嫌がると思いました」
「……うん。自分でも、ちょっとびっくりしてる。でも一人で待ってるのもなんだか寂しくて。……来ない方がよかった?」
「まさか。超うれしいです。早く洗ってこっちに来てください」
「何もしない?」
睨むような視線を俺に向けたなずなさん。
その表情もやばいし、初めて見る濡れた髪とか、さっきは余裕がなくてきちんと見てなかったなずなさんの全部が、俺の胸をドキドキさせる。
「……保証はできません」