アロマな君に恋をして
「ごめんなずなちゃん!旦那が会社で体調悪くなって早引けして来るみたいなんだよね」
「わ、それは大変ですね!早くお家に帰らなきゃ」
「私の方から誘ったのに本当にごめん!またいつか、埋め合わせするから!」
「気にしないで下さい。旦那さん、お大事に」
ありがとう〜、と言いながら小走りで帰っていく緒方さんを見送ってると、旦那さんのことが心配なんだなとあたたかい気持ちになる。
だけどそれを自分に当てはめてみようとしても上手くいかない。
髪を切っても、恋愛や結婚を面倒に思う自分には特に変わりがないみたいだ。
まぁ、そんな簡単に変わるわけもない、か。
「……さて」
元々家でぐうたらしたいと思っていた休日だから、家に帰ってしまってもいいんだけど……
私は一度立ち止まって空を仰ぎ、瞬きをした。
雲一つない青空に、帰るなんてもったいないと言われてるような気がする。
……せっかくだから、このままぶらぶらしようかな。
爽やかな秋の空気を小さく吸い込み、私は再びイチョウ並木の道をゆっくり歩き始めた。