アロマな君に恋をして
しまった、と言う風に両手で口を塞いだなずなさん。もう遅いって。
っていうか本当に告白されてたのか……やっぱり要注意人物だ、あの人。
「なんて告白されたんですか?」
「お、覚えてないよ……」
「本当に?」
聞きながら、彼女の胸に手を置いた。そして感触を確かめるように、ゆっくりと手を動かす。
「や、めて……」
「なずなさんは渡さない」
耳元で囁くと、その言葉に反応したのか手の動きに反応しかのかわからないけど、なずなさんの身体が小さく跳ねた。
「麦くん……どうしたの……?」
「……俺、すごい嫌いだから、あの人」
「大丈夫だよ……私が好きなのは麦くんだけ、だから……」
「なずなさん……」
俺はバスタブの中で、彼女の体を抱え上げた。
「ん、ぁ」
ちゃぷちゃぷと、水面が踊る。
なずなさんの体を浮かべたり沈めたりしていると、俺の嫉妬はだんだんと静かに収まってくる。
こんな俺のどこが優しすぎるんだろう……
それともこんなに余裕がなくなるのは、相手がなずなさんだからなのかな。
長い片想いを経て、結ばれて、彼女のすべてが可愛く思えて……
大人になってから初めての、本気の恋。
子どもの時よりずっと聞き分けのない心と体がもどかしくて愛しい。
眠る前にベッドでもう一度……と思ったけど、なずなさんに無理!と言われたうえ頭を軽く小突かれた俺は、少々残念な気持ちで彼女を抱き締めながら眠りについた。