アロマな君に恋をして
11.ディルの香り、雪の夜

晴れてるけれど北風の強い休日、私はあるショップの中をうろうろしていた。

ディスプレイに並ぶのは、たくさんの腕時計。

私はここへ麦くんに贈るクリスマスプレゼントを選びに来たのだ。


店内には私のように女性一人で来ている人や、カップルの姿も多い。

一緒に選ぶのも悪くはないと思うけど……そうすると麦くんはなんだか遠慮しそうな気がするし。

ずっと真面目に働いてきた私には、少しくらいいい時計を買うくらいのお金はある。


「これ、見せてもらってもいいですか?」

「かしこまりました」


店員さんに出してもらった時計は、文字盤や針に遊び心がいっぱいのなんだかおもちゃみたいなデザイン。

だからって安っぽいわけではなくて、可愛いものが好きな彼にぴったりだと思った。


「これ、プレゼント用でお願いします」

「かしこまりました。彼氏さんへのクリスマスプレゼントですか?」

「え、あ、はい、まぁ……」


これくらいの質問で動揺する自分が恥ずかしい。

この間ようやく麦くんと体も心も結ばれて、恋人らしさは増したと思うけど……まだ慣れない。

店員さんも何も聞かずにさっさと包んでくれればいいのに……


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