アロマな君に恋をして
「ありがとうございましたー」
店員さんの声を背中に受けながらお店の外に出ると、さっきまで晴れていたはずの空がどんより曇り出していた。
なんだか寒さも増した気がするし、雪でも降りそうな気配。
目的のものは手に入ったし、夕飯の買い物して早く帰ろう……
目線を空から前方に映し、一歩踏み出したところで気がついた。
……前から知ってる人が歩いてくる。
しかも休日にわざわざ会いたくない、私の苦手な人。
気づかれる前に逃げよう……
くるりと回れ右をして早足でその場を立ち去ろうとしたのだけど……
「――あれ? 小泉さん?」
……あっさり、ばれた。
私は肩を落としてため息をついた。
「こんなところで会うなんて、すごい偶然だな。運命の神とやらの存在を信じたくなる」
長い足で颯爽と近づいてきたのは、もちろんオーナー。
彼は許可も得ず私の隣に並んで、そんなキザなことを言う。
「……私、もう帰るところなんで。寒いし」
「帰るってことは特に予定がないってことだろ? 寒いならどこかの店に入ろう。ディナーには少し早いけど、ワインでも飲みながらゆっくり話をすればいい」
「いえ、明日も仕事ですし……」
「そんなに遅くまで拘束はしないよ。それに帰りはちゃんと家まで送り届ける。」
うう……どうにかならないの?
彼のこの強引さは……