アロマな君に恋をして
言い切ったオーナーは、静かに……でもとても情熱的な色をした瞳で私を見た。
私は思わず目を逸らしてしまった。
だって……ちょっと都合の良すぎる話じゃないかと思う。
若いだとかアロマに詳しいだとか、セリちゃんを大切にするっていうのはわかる。
だけど……
「……うそ、ですよね?」
「何が?」
「イギリス行きもセリちゃんのためだと聞いてしまったらなおさら……オーナーは別に私のことなんて好きでも何でもないって風にしか思えません。
それ以外の条件をクリアしている私を運良く見つけたから、セリちゃんのために好きな振りをしているだけで……」
「……本当に、そう思うの?」
オーナーが、じっと私を見る。私はいつも何もかも見透かしているようなその目が嫌いだ。
そう思う、というよりは……私は自分がそう思いたいだけなのだ。
彼の気持ちが嘘なら、真正面から受け止めなくて済むから。
気まずい雰囲気になってしまった私たちを見かねたのか、マスターがカウンターの中から呑気な声で言った。
「ありゃ、とうとう降って来ちまったな」
「え……?」
振り返ると、窓の向こうにちらちらと舞う白い雪が見えた。
この場所は暖かいはずだけど、なんだか急に足元から冷えてきた気がしてしまう。