アロマな君に恋をして
12.マンダリン・ガール
-side 大久保麦-
“仕事のことで悩みがあるの”
そう言って突然家に押しかけてきたのは女友達のアユ。
なんだか切羽詰まった様子だったから家に招き入れたのに、何故か話の前に風呂に入れって言われた。
「寒っ……」
シャワーを止め、体を震わせながらいつもより熱めに沸かしたお湯にゆっくり浸かる。
さっき窓の外では雪が降っているのが見えた。
なずなさん、風邪とか引いてないかな……
彼女の顔を思い浮かべるのと同時に、家のチャイムが鳴った気がした。
バスルームの中では聞こえづらいし気のせいかなとも思ったけど、扉を開ける音がしたのできっと誰かが来たんだろうなと思った。
……てかアユ、勝手に出るなよ。
しばらくすると扉は閉まり、足音がこちらに近づいてきた。
遠慮なしにバスルームの扉を開けるのは、もちろんアユだ。
「ねえ、私も入っていい?」
「え。やだよ。俺が出てからにして」
「ケチ」
口を尖らせてあきらめた様子のアユは荒々しく扉を閉めた。