アロマな君に恋をして

……手? まさか。俺は薄く笑って聞き返す。


「見間違いじゃないの?」

「見間違いじゃない! それに男の人言ってたよ? 自分のこと彼女のフィアンセですって」

「フィアンセ……」

「麦、浮気されてるんじゃないの? っていうかむしろ麦が浮気相手で本命があっち、みたいな」

「……アユ。そういう根拠のない妄想はいいよ。でも……気になることはなるね」


“フィアンセ”というのはきっとオーナーが嘘をついたのだと思うことができるけど……

手を繋いでたっていうのは見過ごせない。

だけどなずなさんに限って浮気なんてことは絶対にないと思う。きっと何か理由があって……


「……麦も浮気、しちゃえば?」


ぎゅ、とソファが鳴った。目の前にアユの影がかかり急に視界が暗くなる。


……なんでそうなるんだ?

俺は自分の上にまたがる女友達の顔をぼんやりと見つめる。


「なずなさんは浮気してないよ」

「……じゃあもう彼女のことはどうでもいいから、私としようよ」


アユが甘えた声を出した。


「意味が全くわからないんだけど」

「……好き」


俺は耳を疑った。

好き……って、言ったのか? 今。



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