アロマな君に恋をして
「今日は暇だしとりあえず裏連れてって話して来い。あ、あとこれ持ってけ」
その顔で“裏連れてけ”なんて言ったら怖がられるんじゃ……
そう心の中で心配していると、店長が陳列されている商品の中から、クリスマス用の人型ジンジャークッキーを女の子に渡した。
「わぁ、可愛い!ありがとうございます」
ぱっと表情が華やいだ女の子。どうやら店長の人の好さをわかってくれたようだ。
俺は言われた通り彼女を連れて“stuff only”と書かれた部屋の扉を押す。
店内で使っているものと同じ木製の椅子とテーブル、それから雑貨や備品が乱雑に置かれたその部屋を彼女はきょろきょろと見回している。
「寒いね……今暖房入れるから座って待ってて」
俺はリモコンで暖房のスイッチを入れると、テーブルを挟んで彼女の向い側の椅子に腰を下ろした。
……さて。
何を話したらいいんだろう……?
ブオオ、とあたたかい風を吐き出し始めた暖房の音がいやに大きく聞こえるのがなんだか気まずい。
そんなことを思いながらうつむきがちな少女を見つめていると、意を決したように視線を上げた彼女。
その小さな桜色の唇が紡ぎ出した言葉に、俺は言葉を失ってしまった。
「――お願いだから、なずなさんと別れてください。なずなさんはパパと結婚して、私のママになるんです」