アロマな君に恋をして

芹香ちゃんと会ってから、余計になずなさんと話さなきゃという思いが強くなり、俺は少し早めに仕事を上がらせてもらうと全速力であのアロマショップへ向かった。

電話もしてみたけどやっぱり出てくれないから、直接会いに行くしかもう方法がなかった。


お店に着いた頃には汗だくで、出迎えてくれたなずなさんの同僚の女性――確か緒方さんと言う名だ――はびっくりしながらも俺をソファに案内してくれた。

そして申し訳なさそうに言う。


「なずなちゃん、今日休んでるの……風邪引いちゃったみたいで」

「風邪……ですか」

「うん……まあ他にも色々と理由はあるみたいなんだけど……」


風邪、という答えを得て安心した俺は、彼女の言う“色々な理由”については全く考えを巡らせなかった。

風邪だから電話に出られないのかと少しほっとして、でも今度はなずなさんの体調のことが心配になった。


「ありがとうございます、なずなさんの家にお見舞い行ってみます」

「――え」

「じゃ、失礼します」

「ちょ、ちょっと待って!」


座ったばかりのソファから腰を上げた俺の手を、緒方さんが引き留めるようにつかんだ。


「い、今行くのはあまりお勧めしないわ……」

「なんでですか?」

「なんでって……」


しばらく言いよどんでいた緒方さんだけど、やがて俺の目をまっすぐ見据えると、信じられない言葉を口にした。



「あなた、なずなちゃんを振ったんでしょう? だったら放っといてあげて、今あの子の側にはオーナーが居るわ」



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