アロマな君に恋をして
「か……帰ります!」
気が動転した私は、手の中のスノードームを棚に戻してそそくさと店を後にしようとする。
だけど先回りした彼が、長身の体で出入り口を塞いだから私の逃げ場はなくなってしまった。
「……何で逃げようとするんですか」
子どもみたいに口を尖らせる彼。
何でって……あなたと関わりたくないからよ。と、面と向かって言う勇気のない私は黙り込むしかできない。
「そう言えば髪、短くしたんですね。よく似合ってます」
「そ……そりゃどうも」
彼といい、あの美容師といい、近頃の若い男の人は口が上手いから困る。
あまり言われ慣れてないんだから、いちいち過剰に反応しちゃうじゃない。
「もしかして……これからデート、とかだったりします?それなら、ここ退きますけど」
これは逃げる絶好のチャンスだ。肯定すれば、もうこの変な男の子から解放される。
それなのに。
「デート……ではない……けど」
……ああ、馬鹿な私。元々の性分とはいえ、嘘がつけないなんて。
変なところで正直な自分にがっかりしてうなだれる。
「よかったぁ……」
そんな理解不能な言葉が聞こえて顔を上げてみれば、イケメン君がにこにこ笑顔で私を見つめていた。