アロマな君に恋をして
「インフルエンザじゃなくてよかった……」
病院から帰ると、私はそう呟いてベッドに倒れ込んだ。
解熱剤と抗生物質をもらったけど、どっちも何か食べてからじゃないと飲めない。
ちょうど時間もお昼だし、冷蔵庫を見に行けば何かしら簡単に食べられるものがあるだろうけど、もう動く気力がない……
熱いため息を吐き出してそのまま眠ろうとすると、家のチャイムが鳴った。
「……誰よ……」
無視しよう。荷物が届く予定なんてないし、うちに来るお客さんなんてもう……いないもの。
まぶたを固く閉じて無理矢理に眠ろうとしたけど、来訪者はしつこくチャイムを鳴らし続けている。
うるさい……
ゆらりと体を起こして玄関まで壁をつたいながらなんとか歩いて行き、扉ののぞき穴を覗いてみる。
「……な、なんであの人がここに」
家の場所を教えた記憶はない。緒方さんに聞いたのかな……
そうでなくても強引な人だから、どんな手段で調べたとしても不思議はないけれど。
……無視よ、無視無視。
開けたら何をされるかわかったもんじゃない。
私は扉に背を向け、彼が立ち去ってくれるのを待った。
しばらくするとチャイムは鳴り止み、もう一度のぞき穴から外を確認するとそこにはもう誰の姿もなかった。
「よかった……」