アロマな君に恋をして
なんだか無駄な体力を消耗してしまった。早く寝てしまおう……と、気を抜いたのもつかの間。
背後で信じられないことが起こった。
ロックの解除されたような、ガチャン、という音と、それに続いて扉の開く気配……
嘘でしょ……?
おそるおそる後ろを振り返ると、二人の人物がそこに立っていた。
「ああよかった、なかなか出ないから倒れてるんじゃないかと心配してたんだ」
そう言ったのは、さっき覗き穴から見たときに確認した彼だ。
そして、彼がどうやって玄関を開けたのかはその隣の初老の女性の発言ですぐにわかった。
「でも小泉さん、やっぱり具合が悪そうじゃない。よかったわね、優しいお兄さんが訪ねに来てくれて」
――彼女はこのアパートの大家さん。オーナーは家族の振りをして、彼女に鍵を開けさせたんだ。
……確かに私には一人兄が居るけど、この人じゃない。
と、人の好い大家さんに説明するのは気が引けて、私はただ頭を下げた。
まさかそこまでして部屋に入ろうとするなんて……もう、なんか迷惑を通り越して呆れるっていうか、拍手すら送りたい。
「……私はいつからあなたの妹になったんですか?」
大家さんが去ってから、私は皮肉っぽくオーナーに聞いた。
「すぐに開けないのが悪いだろ」
「……ああそうですね」
この人と話してると熱が上がりそう……何しに来たんだろう、早く帰ってくれないかな。
「……つらそうだな、本当に」
そう言うと、廊下に上がったオーナーはいきなり私の身体を抱き上げた。
これは……お姫様抱っこ……
「ちょ、ちょ……っ!」