アロマな君に恋をして
じたばたする私に構わず、オーナーはこんなことを聞く。
「何か食べたのか?」
「……いえ、動くのも面倒だったからなにも」
「呆れたな。ベッドにきみを寝かせたらキッチンを借りる」
「え?」
いきなり来て料理する気……?
驚いてオーナーの顔を見上げると、彼は気まずそうに笑った。
「言っておくけどきみの彼氏みたいに料理が得意なわけではないよ。セリにもいつもダメ出しをされるしね。でも、何か食べないと薬も飲めないだろ」
彼が言い終わるのと同時に、私の身体が柔らかなベッドの上に置かれた。
そして布団をかけられた後で、私はぼそりと呟く。
「……もう、彼氏じゃなくなりました」
寝室を出て行こうとしていたオーナーの足が止まる。
「オーナーの思惑通りじゃないですか。……よかったですね」
言葉とは裏腹に、私はこちらを振り向いた彼の目を思いきり睨んだ。
昨日、あなたと街で会うことがなければ、きっとこんなことにはならなかったのに……
あなたが手を繋がなければ……歩未さんに余計なことを言わなければ……
心の中で恨み言を呟いていると次第に目頭が熱くなってきて、私は慌てて布団を頭からかぶった。