アロマな君に恋をして

「……あれしきのことで壊れたのか?」


布団越しに聞こえたオーナーの声。

……やっぱり部屋に上げるんじゃなかった。どうしてそう人の傷口をえぐるような言い方しかできないの……?


「それは意外だったな。やっぱりもともとその程度の二人だったってことだろう。本当に好きなら僕の言うことなんて真に受けるはずがない」


……うる、さい。もう黙ってよ……

布団の中でぎゅっと目を閉じると、パタンと扉が閉まる音がして部屋は静かになった。


「はぁ……」


ため息をついて、布団から顔を出す。

帰ってくれてないかと少し期待したけど、キッチンの方から冷蔵庫を開け閉めする音や食器がぶつかり合う音がする。

……本当に何か作る気なんだ。


こんな弱った時こそ、麦くんのあったかい料理が食べたい。

でもそんな願いはもう二度と叶わないんだ、きっと……

ああもう、なんでいちいち思い出しちゃうんだろう。悲しくなるだけなのに……私のばか……


つうっと頬を伝った涙が枕に落ちる。両手で顔を覆ってみても、思い出すのは麦くんと過ごした楽しい時間のことばかり。


まだ付き合い始めてそんなに時間は経っていないのに、こんなに麦くんは私の中にいっぱいる……


また、大きな傷ができちゃった。今度はどれくらいで癒えるんだろう……

もう若くないから、きっと昔より治癒能力は低いのに……


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