アロマな君に恋をして
涙を浮かべたままぼんやり横たわる私の元に、オーナーが戻ってきた。
腕まくりしたシャツの胸元からお腹の辺りにかけて、何かの汁が跳ねたような跡があった。
「……汚れてますよ、服」
無表情で指摘すると、彼は苦笑してシャツの汚れた部分を引っ張る。
「仕方ないだろう、菜箸で持つとつるつる滑るんだよ麺ってやつは。それより起きられるか? ダイニングで食べられないようならこっちに持ってくるけど」
「……行きます」
私は少し考えてからそう言って布団を剥いだ。オーナーが一体どんなものを作ったのか少し興味があったのだ。
服をあんなに汚しているくらいだから、きっとすごく下手なんだろう。それを笑ってやろうと思った。思いっきり。
「先に言っておく。……見た目で判断しないでくれ」
私がダイニングの椅子に腰かけると、オーナーはそう言って私の前に丼を置いた。
匂いは、出汁の香りがして悪くないけど……その見た目を一言で言うなら“ぐちゃぐちゃ”だった。
「……なんですかこれ」
「にゅうめん」
「にゅうめん……?」
一体どこをどう見たら……と箸を入れてみると、なるほど細い麺が中に隠れていた。
表面は溶き卵で覆われていて、でもふんわりした感じではなく、ただ適当に混ぜただけ、という感じだった。