アロマな君に恋をして

「……オーナー、私急に食欲がなくなりました」

「食べてみろって。苦情はそれから受け付ける」


何故かオーナーは自信満々だ。

これ、食べるの……? さっきは笑ってやろうとか思っていたけど、笑えない見た目なんですけど……


私は細い麺を器用に箸で一本だけつまみ、目を硬く閉じながらちゅるる、と一思いに吸った。


「そんな少しでわかるのか? 味」

「……まあだいたい、は」


……どうしよう。美味しい。


「で? 肝心の感想は?」


でもそれをこの人に言うのはやだな。調子に乗りそうだもん。

そう思った私は黙って二口目に取り掛かる。さっきよりたくさんの量を口に含むと、それはやっぱり見た目に反して美味しいのだった。


「……ま、食べられるならよかった。鍋にお代わりもあるから」


立ったままキッチンに寄りかかり腕を組んだオーナーが、穏やかな表情で言った。

あ、やばい、泣きそうだ。だめだ、泣いちゃダメ。

だって元はと言えばこの人のせいで麦くんとの仲が壊れたのに、それで優しくされて涙腺緩むなんて、本当にこの人の思うツボだよ……


私は湯気で鼻水が出てしまった振りをして、思いきり上を向いた。

それで何とかごまかせたと思ったら、オーナーが予想外の発言をするので私は驚いた。


「……さっきは……少し言い過ぎた」

「え……?」


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